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学生からのメッセージ

藤田瑞祥さん 【国立センメルワイス大学】

ハンガリーの医学部に進学すること、その素朴ではあるけれど容易ではない一選択の意義を考えることは、とてもわたしの身に余る。医者になるという目的を口にすることすら今や変わらず誰しもが自らに当然与えられた、平等な権利であると感じはじめているにも関わらず、医療に従事するものたる知識と素養を十分するとともに、国家的な資格を付与され医師に社会が要求する役割および責任の深い自覚へ至るという医師になる過程そのものは誰もが平等に歩むことを保障されていないばかりか、国境を横断し遠く離れた異国の地へといたった私たちを一見してその平等さから遠ざけているかにすら見える。例に洩れず、その決して短くはない過程の中途に身をおく、在学中たる一学生が、手を伸ばせるかぎりの経験のいくらかを言葉へと綴りなおす行為自体、なにほどか口はばったいところがあるのは、なにも学生という立場のみならず、臨床の場へと未だ至らずに遅々として机の上で学びを重ねゆく焦燥によらないとも言い難い。あるいは、またそうしたことがらのなりゆきのうちに、この国で用いられる言語に未だ親しみを得ないままに次の1年を重ねていくことに対するいくらかの気後れにも近い気分が、自らを取り巻く環境についてあっけらかんと口にする不遜を強いて遠ざけていると言える。

センメルワイス大学(Semmelweis Orvostudományi egyetemnek, SOTE)と呼ばれる、EU加盟の東欧国ハンガリーの首都ブダペストに在する国立の医学および医療関係の専門大学へ進学する、というひとつの選択は、日本で学生生活を送る一般的な高校生にとって、統一的な像を結ばない。それは少なく見積もっても、日本語で高等的にものを学ぶことをしないというひとつの選択であり、また職業訓練に身をやつすという点でリベラルアーツを修め、あるいは学際的な学びを深める機会を自らで限ってしまうひとつの選択である。なるほどわたしたちが英語で医学を学ぶときに手にする自由とは、そうした選択と手を切ることの上になりたつ自由だろう。けれどもいくらか逆説的に、それは決して悪いことではない、と私は思う。日本のどれほどの数の大学において、入学してここまで早く遺体に直に面することが可能だろうか。あるいは、日本の医学生のどれだけが今や公用語となった英語によりしたためられる書物の宇宙に自由にアクセスできるだろうか。もちろん、言語的な制約は逃れがたく生の現実としてのしかかりはする。だけれどそれはあくまでも約束された不自由である。日本語を母語として話す私は、外国語で勉強することの学習効率は母国語の20-30%くらいであると理解する。その上で、われわれ留学生がハンガリー卒業のち日本の医師国家試験受験資格を、その過程においてクリアしていることは決して見逃されるべきではない。

ひとがひとに、それも生の有機的構成体、肉の塊にすぎない人体にさけがたく興味を惹かれることから、医学部の学ははじまる。解剖学、生理学、正常な人体の構造と機能を学び取ったのちに待たれるのは、病の経路と現象、そして臨床の場そのものだろう。だけれど、否定しがたく想像の射程はその先にまで延びてゆかない。だから、もし日本にまだいる高校生が仮に、そう私のと遠くない好奇を心に宿し、この地に足を踏み入れる選択をするのならば、この地に既に居をおく老練さとは距離をおき、旧知の友のように語らいあうことが可能であれば幸いである。

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