EMBO Molecular Medicineに掲載された論文をふまえ、遺伝子医学・希少疾患の学部長で研究リーダーであるDr. Mária Judt Molnárは、「疾患は多様な神経系症状を引き起こしていますが、その遺伝的背景はこれまで明らかにされてきませんでした。国立脳研究プログラムでは、ある一人の女性と、その母親から産まれた2人の子供を研究対象にしました。 そして、この研究により、彼女たちの症状である枢神経系の発達障害および筋萎縮が、MSTO1の不具合によるものであることを発見しました。」と述べました。
母親たち三人の遺伝子地図を分析し、その結果を、他のヒトゲノムと比較しました。
「この臨床症状や過去の診断結果に基づき、我々は、病気の最も大きな原因とされる遺伝子を見つけることができました。これは、非常に珍しい病気であり、神経系の発育異常と筋系障害を引き起こします。」とDr. Mária Judt Molnárは述べました。
この遺伝子の不具合は、多様な症状を引き起こします。子供たちは、自閉症と統合失調症の兆候が示され、一方の母親は、前庭機能と筋系機能の障害に苦しみました。そして、骨だけでなく、結合組織、肝臓、内分泌臓器にも異常がみつかりました。
この研究結果により、ミトコンドリアの通常機能が失われ、ミトコンドリアに影響を与える遺伝子の配列が壊されることが分かりました。機能性研究において、今まで影響を与えるとされていなかった遺伝子の突然変異が疾患の原因となることを立証する必要がありました。そのため、アメリカ、フィラデルフィアのDr. György Hajnóczkyの研究室で、研究グループのメンバーで、遺伝子医学・希少疾患部門の専任講師であるAnikó Gál博士によって研究が行われました。
この研究に関して、Dr. Mária Judt Molnárは次のように述べています。「新しい遺伝子が病気に関係しているかどうか判断し難いという結果となりました。今日まで、人体におけるMST01の影響は解明されておらず、バクテリアレベルのみの結果が論述されてきました。」
興味深いことに、ハンガリーの研究とは別に、イタリアにおける研究グループも、同じ遺伝子の機能不全による症状があった患者を発見しました。 この2つの研究グループの結果から分かるように、遺伝による神経障害において、決して稀なケースではなく、この遺伝子に関する研究の意義が大きいことが分かります。